Q1:泥水式シールドが岸壁に接近しているため、逸泥防止の薬液注入を検討していますが、改良範囲について資料等がありましたら、お教えください。

A1:『薬液注入工設計資料(平成12年度版) (社)日本薬液注入協会』によると、薬液注入改良範囲は下記1,2の大きい方を採用することを基本としています。
1.最小改良範囲(一般に複列注入が可能な厚み(1.5m上1))
2.改良地盤の粘着力cを考慮した地山の安定計算より求まる改良範囲
上記設計資料にはシールド工事の薬液注入範囲設計方法についての記載もあります。参考にされてはいかがでしょうか?設計施工実績としては、シールド側部の改良厚を1.5m−D/2の範囲にすることが多いようです(Dはトンネル直径)。

当社では、迅速に検討書を作成致します。

 
Q2:今、下水道小口径推進工法の立坑から水平薬注を考えています。経済性から出来るだけ小さな鋼矢板立坑としたいのですが、ロッド長なども出来るだけ短いものを使ってコンパクトにした場合、最小スペースはどの程度必要でしょうか。また、現在立坑長を3.0mとしていますが、これで可能でしょうか。
 
A2:施工機械に関しては、各施工業者によって異なるようです。
一般的な話となりますが、通常の施工では1.5mの削孔ロッドを使いますので、余裕代を見込むと3m×3m
詳細は施工業者によって異なりますので、専門業者にご相談されてはいかがでしょうか?なお、水平注入に関する資料を捜しましたが、特に見つかりませんでした。最新の施工技術に関しては『最新地盤注入工法技術総覧』と言う図書が『(株)産業技術センター』より出版されています。これは薬液注入工法に関して比較的新しい技術まで掲載されております。

当社では、一回り小型のサンダーマシンによりφ1.8mの鋼管立坑からの水平注入実績がございます。ただし、水平距離20mが限界としています。その際は0.5mロッドを使用します。


Q3:現在DJMを施工中ですが 改良後にチェックボーリングを行ったところ、GL−6m付近で長さ1mにおよぶ空洞を確認しました。軽石では比較的良好な杭が造成されるのですが、ロームでは改良ムラが多く見られます。原因は攪拌不足と思うのですが、大きな空洞の生じた理由が分かりません。(対象土質:軽石およびローム/地下水位:GL−1m程度、地下水の流動はない/固化材:一般軟弱用、添加量180kg/m3 室内強度の3倍を目安とする)

 
A3:可能性としてあるのは2つです。
1.DJMでは空気圧で粉体を地盤内部へ送ります。この時の高圧空気は回転軸に沿って排気されます。これが何かの原因で地盤内に残ったもの。
2.過去に近接して建てられたビルや土中構造物はありませんでしょうか?建設時に横矢板などの山留めを用いていた場合、パイピングなどの現象で砂が山留め内部に流れ出し、土中に空洞が発生することがあります。
  また、回転ムラに関しては、改良土のサンプルでセメント分含有量を測定できます。強度が出ていなくて、セメント量が少なければ撹拌不足だと思われます。ローム土ですから、有機分含有量は少ないと思いますが、有機分が多いとセメント量が多くても強度が出ない場合があります。

 
Q4:小規模な取水堰(川幅7m程度)の基礎地盤ですが、床付面より2〜3mの深さで軟弱層があり、これを地盤改良するに当たって置換工法を採用したいと思います。小範囲かつ簡素な浅層での地盤改良工法がありましたらお教え下さい。 
 
A4:一般的には置換工法が最も安くて確実ですが、残土処分費用によっては、費用が高くなるかも知れません。この様な場合、深層混合処理などのセメント固化系の処理が一番でしょう。ただし、陸上からの施工となりますので河川上に足場を確保する必要があると思います。この場合、足場はH綱製か盛土になるでしょうか。
 また、この状況では、バックホウによる混合が、機械も一般的かと思います。この場合、処理手順として、以下のような流れになります。
 
施工範囲のドライアップ → バックホーによる粘土層の掘削撤去 → 粘土へのセメントの添加・混合 → 混合処理土の埋め戻し
 
ただし、2つの施工上の制約があります。
 
1)掘削域が矢板などで締め切られて、ドライアップ状態であること。
2)バックホーで掘削した土砂を仮置きして、セメント混合・撹拌する場所があること。
 
 上記の条件が合えば、表層混合ではバックホーによる方法が一番安価であると思います。なお、セメント添加量は、土や目標改良強度によって異なります。有機分の多い(強熱減量の多い)粘土ほど、添加量は多くなります。
 
Q5:民有地内の立坑の底盤改良に使用したいのですが、シリカゾルの耐久性について教えてください。 
 
A5:立抗ということですから、どのくらい期間の耐久性が必要なのかが問題になります。通常の水ガラス系の薬液(LWなど)でも6ヶ月間くらいは止水性・強度は満足できると思います。

以下は、それ以上の期間を想定した耐久性グラウトについての話となります。
 
シリカゾルの耐久性について
16年前の改良体を掘り出した実例を挙げますと、地下水位の影響を受けた場所にも係わらず、16年前の施工当初と比べて劣化は認められませんでした(この時の改良強度は400kPa程度でした)。
 
シリカゾルの耐久性がよい理由
水ガラス系の改良土の劣化は、水ガラス中に残存するNa+イオンが固化物のシリカと反応して固結物を溶かしてしまうため起こります。簡単に書きますと、シリカゾルではこのNa+イオンを硫酸で中和し、Na2SO4塩にしているため、劣化が生じないわけです。ただし、この硫酸塩(硫酸コンとも言います)はコンクリートに有害なことが分かっております。このため、五洋建設では、シリカゾルは使わず、電気浸透膜やイオン交換樹脂を使ってNa+イオンを除去した活性シリカという薬液もを使用しています。

 
Q6:土地を購入しようと思います。良い土地かどうか調べるためにはどのような方法があるのでしょうか?
 
A6:一般的に『良い土地』を購入しようとすると、インフラの整備状況や日当たり、駅の近くなどという立地条件の良し悪しなどに注意が向いてしまいがちです。しかし、本当に『良い土地』かどうか判断するための基準には、地盤の下の状況がどうなっているか知ることも重要です。その意味で、地面の下の状況がどうなっているのかを知ることも重要です。表面は堅そうな地面であっても、昔は沼地だったなどと言う場合、地面の下にやわらかい粘土がありますので、家を立てた後で沈下などの問題が生じます。
 
 それでは「地盤調査」とは一体何を調べるのでしょうか。
仮に、ある地盤に建物を造る場合、その土地には地耐力が求められます。簡単にいえば、建物を支える強さが地盤にあるかどうかを調べるということです。
 通常の家を建てる場合には、現位置の調査が有効です。なかでも、スウェーデン式サウンディングと言う方法は比較的安価に行うことができ、地盤の下数メートルの状況を知ることができる方法としてお勧めできます。
 また、工場跡地などでは、重金属などにより土壌が汚染されていることがありますので、土地の履歴を知ることも重要です。

 
Q7:薬液注入工法のセメント系注入材の適用土質について質問します。
1.セメント系注入材が適用できる土質を教えてください。
2.セメント系注入材は懸濁型でありそのうちの普通のポルトランドセメントは粒径が大きく、砂層には注入ができないようですが、全く浸透できないのでしょうか。また、改良効果は期待できないのでしょうか。具体的な試験データのような物がありましたら、いただけませんでしょうか。また、超微粒子セメントを利用すると砂層への浸透注入は可能でしょうか。この場合は改良効果を期待できますか。この場合の材料炭化はリットルあたりいくらくらいになりますでしょうか。
A7:まず、セメント系の薬液の注入限界の件です。
これは私自身が実験で確認したことですので、それ以上でも以下でもありません。
私は、細粒分含有率(Fc)の異なる砂へ超微粒子セメントを注入してみました。その結果、Fc=0〜1%程度の荒い砂では、浸透注入させることができました。Fcがこれ以上大きくなると、割裂注入になり、均等な改良体はできませんでした。いろいろな会社がチャレンジしていますが、うまくいかないようです。
薬液の単価は、50円/L〜70円/L程度だと思います。
直接工事費は、施工費込みで、100円/L程度だと思います。
それほど強度がいらず、恒久性のみが必要な場合、弊社が開発した「浸透固化処理工法」をお勧めします。
qu=60〜100kPa
薬液単価 30円/Lです。
施工実績も13件、10万m3くらいあります。
もう少し強度が欲しい場合、シリカライザ−という薬液があります。
qu=400kPaくらいまで上がります。
強酸性のため、コンクリート構造物へ若干の影響があります。
どちらも、Fcの適用限界は、20〜40%です。
適用限界は土によって変わります。
 
 
Q8:設計変更で矢板の欠損部に薬液注入工(水ガラス)を追加する必要性が出てきたのですが、その根拠として一般的にどのようなデータを提出すれば認められるのでしょうか?
掘削深は3.5m、地下水位はG.L-1.5m、シルトを含む砂質土、多量の湧水があり、N値は3です。ただし全体で40,000リットル程度の量であり、工期もわずかな為、調査工等の手間をはぶきたいのですが。
A8:湧水の多い地盤における土留め矢板欠損部への薬液注入は、止水と地山安定のために用いられます。
『薬液注入工設計資料(平成12年度版) (社)日本薬液注入協会』によると、薬液注入改良範囲は、下記1,2の大きい方を採用することを基本としています。
1.最小改良範囲(一般に複列注入が可能な厚み(1.5m以上))
2.改良地盤の粘着力cを考慮した地山の安定計算より求まる改良範囲
 
「矢板欠損部に薬液注入工を追加する必要性について、その根拠として一般的にどのようなデータを提出すれば認められるのでしょうか?」というご質問ですが、発注者の違い、工事規模、工事の危険性などによって提出する根拠データ(検討精度)にも差があるものと考えられます。
 
例えば、薬液注入の必要性を説明することだけで設計変更に結びつくのであれば、「試掘した結果、多量の湧水があり、地山崩壊の危険性から、施工に支障をきたす恐れがあり、仮設工として薬液注入を行いたい。」という旨を伝えれば良い訳ですが、設計計算書を添えなければ設計変更を認めてもらえないのであれば、薬液注入を行うことによって、止水と地山安定に問題がなくなることを発注者に理解してもらう必要があります。
通常、止水および地山安定を目的とした薬液注入工の設計には、最低限の土質調査として、N値と粒度分布が必要であり、以下の通り設計に活用しています。
  粒度分布 → 注入薬液選定、注入工法選定
  N値   → 改良強度(改良後粘着力c)推定、原地盤の内部摩擦角φ推定
ご質問のケースでは、対象土がシルトを含む砂質土、多量の湧水ありということなので溶液型水ガラス系薬液注入を選定しているものと思います。
止水性については、薬液注入を行うことで地盤の透水係数がk=0.0001cm/sec程度になるので、厚さ1.5m以上を確保すれば、止水壁として問題がないことを、『薬液注入工設計資料』等を参考にして説明できます。
地山安定については、薬液注入部分の開削により、地山の主働破壊が発生しないように設計を行うのが一般的です。設計に必要な土質定数は、原地盤および改良地盤の内部摩擦角φ、粘着力cです。設計手法については『薬液注入工設計資料』等を参考にして下さい。
 土質定数を詳細に求めるのであれば三軸圧縮試験を行う必要もありますが、「工期もわずかな為、調査工等の手間をはぶきたい」というなら、設計に必要な土質定数をN値から推定することもできます。
ご質問のケースがN値=3の砂質地盤のということなので、設計に必要な土質定数は以下の程度ではないでしょうか。
 原地盤:  φ=25°程度,c=0
 改良地盤: φ=25°程度,c=50kN/m2程度
その他、『薬液注入工法の調査・設計から施工まで 土質工学会』なども参考にされてはいかがでしょうか?
 
Q9:シルト層とは、簡単にいうと、どういうものですか。
 
A9:土はいろいろな大きさ(粒径)の土の粒が集まってできたものです。この粒の大きさによって土の呼び名は4段階(種類)あります。土木のことをほとんど知らないひとでも、この4種類の内の3つ、「粘土」、「砂」、「礫(れき)」は聞いたことがあるのではないでしょうか。残りの1つが「シルト」と呼ばれるものです。
ところで、この「シルト」という言葉には、2つの意味があります。一つは土の中の「粘土」より大きくて「砂」より小さい範囲の粒径の土粒子(数字で言うと、粒の直径が0.005mm以上で0.075mm未満となります。)を指す場合と、もう一つは土全体の「性質」が粘土ほど粘りけがないが、砂ほど粒が大きくさらさらしていない、粘土と砂の中間の性質をもつ土を指す場合の2通りです。(この言い方は厳密には正しくありません。あくまで、「簡単に」ということで許して下さい。)「シルト層」と言うと、後の方の意味となり、土質(土の性質)がシルトに分類される地層と言うことができます。
土を性質の面からの分類法について、もう少し厳密に書きます。(読みたくなければとばして下さい。)土を大きく分類すると、細粒土と粗粒土の2つに分かれます。細粒土は「粘土」、「シルト」の割合が全体の半分以上ある土を指し、粗粒土は「砂」と「礫」の割合が半分以上あるものとなります。
この細粒土をさらに「粘土」と「シルト」に分類するには、土の柔らかさを表す「コンシステンシー」という指標から判断するというのが正式な分類のしかたとなります。このコンシステンシー試験から求められる、液性限界(wL)と塑性指数(Ip)の値を用いて、
Ip≧0.73(wL-20)となれば「粘土」、
Ip<0.73(wL-20)となれば「シルト」
というように分類するのが、我が国の正式な分類基準となっています。
 
 
Q10:薬液注入工法の施工に関する暫定指針によると、「設計どおりの薬液の注入が行われるか否かについて、調査を行うものとする。」とされていますが、その調査に要する費用負担は、一般的には業者側・発注側どのように考えられるでしょうか。

A10 一般に、工事にかかる費用ですから、発注者の積算に計上されるべきものと考えております。
ただし、これまでの実績では、工事の規模などにより、異なることもあります
 
 
Q11:
1.支持力について、地盤改良マニュアル(セメント協会)P109では、許容支持力を一軸圧縮強度から求めて、P262では、必要粘着力から一軸圧縮強度を求めているように思えます。セメント配合量は後者の考え方でよいか?
2.砂質土に支持力は無視して1tfの粘着力をもたせたいとき、単にC=qu/2 、 qu=2kgf/cm2として配合量を決めればよいか?
3.薬注のように注入率(セメント配合量)による、原地盤の粘着力増加は考慮しないのか?(原地盤の粘着力は無視?)
4.支持力公式のDfの考え方について、改良体の基礎底面下の支持力の検討では、本体工の根入れも含めて改良体深さをDfとし、本体工の基礎底面下の支持力の検討では、Dfを本体工の根入れとするのか?
5.改良柱の径を決める際、土質、透水係数、一軸強度、N値、施工深度等から留意すべきことは?
6.地すべり防止に固化材による改良を行う際、その範囲は強度と範囲の2つを試行錯誤して決めるのか?
 
A12
1.前者:Pmax ≦ qa(許容支持力度) = qu(一軸圧縮強度)
  後者:Pmax ≦ qa(許容支持力度) = (1/3)αcNc(支持力公式)、qu=2c
「地盤改良マニュアル(セメント協会)」の支持力公式は、「建築基礎構造設計指針」に準じているので、後者の式で算定します。ただし、連続基礎(帯状基礎)では形状係数α=1、改良地盤の内部摩擦角φ=0°では支持力係数Nc=5.3、この場合、後者はqa=(1/3)・1・(1/2)qu・5.3=0.88quであり、前者のqa=quとあまり差がありません。一般に、セメント系改良地盤はφ=0°として扱うので、概略設計の場合には前者のqa=quを用いても問題はないと考えられます。なお、支持力公式(テルツァーギ、プラントル、マイヤーホフなど、およびこれらの修正)や安全率の考え方は設計基準毎に若干異なるので、まず、どの設計基準書に準拠して設計を行うべきかを明確にする必要があります。私の知っている範囲では以下の通りです。
 ・港湾基準:    支持力公式;テルツァーギ修正
           安全率;Fs≧2.5(重要構造物)
 ・建築基礎設計指針:支持力公式;テルツァーギ修正
           安全率;Fs=3(長期)、1.5(短期)
 ・道路橋示方書:  支持力公式;プラントル、ソコロフスキー
           安全率;Fs=3(常時)、2(地震時)
 
2.通常の設計では地盤をc材(φ=0)またはφ材(c=0)のどちらかに分けて考えます。原地盤砂層が摩擦材料φ材(τf=σtanφ)でも、これにセメントを混ぜると拘束圧によって強度が変化しない粘性材料c材(τf=c)の特性になると考えます。この場合、前述1.後者の支持力公式を用いて改良強度qu(=2c)を求めます。
 
3.薬液注入の設計における改良地盤のせん断強度τfは、原地盤のc、φに薬液注入による粘着力Δcが付加されたと考えて算出します。改良強度が小さいため、改良地盤としてのせん断強度特性は、原地盤の強度特性に大きく依存しているという考えであり、算出式は以下の通りです。
   τf = c+Δc+σtanφ = (1/2)qu・tan(45°-φ/2) +σtanφ
ここで、Δcは薬液注入による粘着力増加であり、ゲル強度と非排水せん断時の土骨格膨張に伴う負圧発生による見かけの粘着力の合計値です。
一方、セメント系地盤改良の設計における改良地盤のせん断強度τfは、原地盤のc、φによらず、セメント混合後の一軸圧縮強度quの1/2としています。 τf=(1/2)qu
セメント系地盤改良のせん断強度に、原地盤のc、φが関係しないのは、モルタルを練る場合に、使用している砂の内部摩擦角φを考慮しないのと同様です。
 
4.根入れDfは、常に地表面から検討面までの深さですが、Dfが大きくなるほど支持力が大きくなるので、より危険側の検討をするためにDfを考慮しない場合もあります(設計者判断)。
 
5.機械攪拌式混合の場合の改良柱の径は、現有施工機械の仕様から0.8〜1mが一般的です。高圧噴射式混合の場合の改良柱の径は、薬液注入の場合の改良径の考え方と同様に、ご質問の通り、原地盤の土質特性、施工深度などの他、使用する固化材、吐出圧、貫入・引抜き速度などによって異なります。
 
6.ご質問の項目の他、改良率(改良断面積/工事面積)も変化させて試行錯誤して決定します。土地の制約、配合試験結果(強度が出ない土質もある)、施工機械の特性、過去の工事実績などを参考にして、制約条件の厳しい項目から決定していきます。
 
 
Q12:重力式擁壁を計画しています。N値が6の砂質土地盤で100kN/m2の地盤反力度を確認したいのですがどのような手立てがありますか。
 
A12:N値から砂質土地盤の許容地耐力qaを求めたいとのことですが、簡単な経験式として以下のものがあります。
砂層 qa = N (qaの単位はtf/m2)
参考文献:「N値およびc・φ −考え方と利用法−」 発行:(社)地盤工学会
従って、今回の場合N値が6であれば、許容地耐力qa=6tf/m2≒60kN/m2となりますので、100kN/m2には若干及ばないことになります。
もう一つは、N値から砂の内部摩擦角φをφ=√(20N)+15 (°)として求め、
地盤の長期許容支持力度qaを
qa=1/3(αcNc+βγ1BNr+γ2DfNq)
から求めるというものです。この方法についての参考文献は、前述のものにも記述してありますし、他にもたくさんあると思います。いずれにしても、砂質地盤でN値が6ですと微妙ですが、一般的には緩めの地盤であると思いますので、慎重に設計することが必要であるように思います。
 
 
Q13:薬液注入及び地盤改良の止水効果について質問致します。崩壊した斜面の復旧工事を行っています。崩壊後、数ヶ月が経過しましたが斜面は一応安定していました。しかし、現状の安全率を1.03と仮定して、崩壊した土砂を除去しようとすると、安全率が0.87まで低下してしまいます。このため、再崩壊を防止する目的で崩壊した土砂に薬液注入工を施し、粘着力を増すことで地盤の強化を図ることを考えました。
 薬液注入後に実施した標準貫入試験結果では、N値が向上しており、C=2/3Nの関係式から、目標とする粘着力が得れたことが確認できています。崩壊した原因が、降雨による間隙水圧の増大と考えられるため、薬液注入された地盤内に降雨を浸透させたくないという思いがあり、注入後にどの程度止水効果が上がったのか、数値的に究明したいのです。透水試験では5.67×10(マイナス6乗)と、いわゆる「難透水層」であることが確認できております。しかし、発注者の意向としては、もっと具体的で明確な表現を求められています。具体的な方法がありましたら教えて下さい。
 もう一つ質問ですが、崩壊して崩れ落ちた箇所については、「補強盛土工+地盤改良」によって復旧しました。この地盤改良を行った箇所での止水効果についても、上記同様、究明方法がありましたら、教えて下さい。最終の対策工法は、「コンクリート版+グラウンドアンカー工」です。
 
A13:ご質問の通り斜面崩壊の主原因は降雨であると考えられますが、降雨による斜面崩壊には以下のような様々なパターンが考えられます。
1)降雨により表層が浸食された。
2)降雨により土が水を含み土の重量が増したことによって斜面安定が保てなくなった。
3)降雨により斜面内に水の流れが発生し、間隙水圧上昇により有効応力が減少し斜面安定が保てなくなった。
4)斜面の透水性(排水性)が悪い場合には、降雨により斜面内部の地下水位が上昇し、水圧が斜面を押し出すために斜面が膨れあがり崩壊する。
ご質問の状況が上記のどれに当てはまるかは判りませんが、再崩壊を防止する目的で、崩壊した斜面に薬液注入を行い地盤の強化を謀るという対策は間違ってないと思います。
ただし、薬液注入を行うことで斜面は遮水壁となるので、例えば表層だけしか薬液注入を行わない場合には、上記(4)のような内水圧による崩壊を招くので注意が必要です。これを防止するためには、改良厚を十分にとり改良土の重量で、背面から受ける土圧と水圧に対抗できるように重力式擁壁として設計する。もしくは、改良厚が薄い場合には排水孔を設けるなどの圧抜き対策を行うことが大切だと思います。
 まえおきが長くなりましたが、ご質問の「地盤改良による止水効果の説明方法」についてお答えします。一般的には「透水係数が10のマイナス6乗cm/s」というだけで難透水層と理解してもらえるのですが、正確には、「透水係数が小さい層が何mあるか」という「層厚」も考慮して難透水層かどうかを判断します。
 例えば、
『薬液注入工設計資料(平成12年度版) (社)日本薬液注入協会』を参照すると、仮設矢板欠損部の遮水工として薬液注入を行う場合の改良厚は、一般に複列注入が可能な厚み1.5m以上としているケースが多く見受けられます。これは、現場での湧水量などを反映した経験値であると考えられます。
この場合、「薬液注入により透水係数が10のマイナス6乗cm/sの層が1.5m以上複列注入してあるので十分に難透水層です。」と説明すれば良いものと考えられます。
 例えば、
『一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める命令(1998年6月16日総理府,厚生省共同命令)』には遮水工の規定があり、「透水係数が10のマイナス5乗cm/sの層が5m以上存在する場合は遮水層と見なす」という旨が記されています。
浸透時間(水が遮水層を通り抜けるまでの時間)tは次式で表されます。
 t=(L^2)/(k・h)
   ここに、L:層厚,k:透水係数,h:遮水層両側の水位差
例えば、k=10^-5(cm/s),L=500(cm),h=50(cm)の場合には,t=500000000(sec)≒16(年)となり、層を水が通り抜けるのに16年近くかかります。従って、難透水層以上に止水性の高い遮水層と見なせるわけです。
ご質問の透水試験結果k=5.67×10^-6という条件をもとに、この基準と同等の遮水性能を有する層厚を算出すると、(L^2)/(5.67×10^-6)=(500^2)/(10^-5)の関係からL=376(cm)となります。もしも改良厚が4m程度あるなら、「透水係数5.67×10のマイナス6乗cm/sの薬液注入を4m程度行っており、最終処分場の遮水工と同等の遮水性を有しています。」と説明すれば良いものと考えられます。
 
Q14:砂層とシルト層の特徴を教えて下さい。
 
A14:砂層とシルト層の特徴と言うことですが、ここではシルト層を厳密に粘土層と区別せずに粘性土を主体とした細粒土からなる層として説明します。なお、シルト(層)については、この地盤改良質問箱のQ34に簡単な説明がありますので参考にして下さい。
 まず、簡単に砂層とシルト層の特徴についてイメージを列挙します。
 
  項  目          |  砂層    | シルト層
−−−−−−−−−−−+−−−−−−+−−−−−−
 粒の粗さ           |  粗い     |  細かい
 重さ (密度)        |  重い    |  軽い
 水はけ(透水性)     |  良い     |  悪い
 粘りけ(粘着力)       |  無い     |  有る
 沈下量(圧縮・圧密)   |  小さい     |  大きい
 沈下の速度         |  早い     |  遅い
 
 最も基本的な違いは「粒の粗さ」です。砂(礫)(粗粒土)とシルト(粘土)(細粒土)は粒径により区分されます。その境界となる粒径は、日本では0.074mmとしています。当然、粒が大きければ粒子間の隙間(間隙)も大きくなるために水が通りやすくなり、小さければ通りにくくなります。しかし、透水性の高さは隙間の大きさによるもの以上に、粒子が水を抱える力が大きく影響します。特に粘土のように粒子が細かい土は表面の電気的な力があり、これにより水を抱える力が大きくなります。この力によって透水性が小さくなり、また土に粘りけ(粘着力)がでます。
 この粘りけは沈下にも影響します。つまり、砂層は粘着力がないために沈下量=骨格の圧縮量となりますが、シルト、粘土層の沈下は抱えた水がゆっくりと排出されながら、排水された分だけ体積が減る(沈下する)という、「圧密」現象となり、一般的に砂層に比べて大きな沈下が時間をかけて発生します。また、一般に地盤の強さは含水比と大きく関係し、含水比が小さくなれば強度が大きくなりますが、砂に比べてシルト・粘土層は水が抜けるのに多大な時間と力が必要となるため、一般に軟弱層と言えば特殊な土を除けば、含水比の高いシルト・粘土層を指します。
 またこの粘着力の有無によって、砂層とシルト(粘土)層では破壊現象、問題点が異なります。
 粘着力の無い(非常に小さい)「砂層」では間隙水の水圧、動水勾配、浸透圧が砂の骨格に働いている重力による力よりも大きくなることによって水と共に流動状態になる破壊:「液状化」、「クイックサンド」、「パイピング(ボイリング)」という破壊現象が問題となるのに対し、粘性土層では、粘着力が働くために「ヒービング(盤ぶくれ)」といった現象になったり、先に述べた圧密沈下による長期的な変形(沈下)や側方流動による破壊が問題になります。
 
Q15:薬液注入工法での底版の改良厚さの決め方について教えてください。
1.掘削底面下が砂礫土の場合
2.掘削底面下が粘性土の場合
3.掘削底面下が互層地盤の場合
4.互層地盤の場合、ヒービング、ボイリング、盤ぶくれのどのケースで検討をすればよいのでしょうか?
  鋼矢板の根入れ先端の位置により決めるのでしょうか?
5.上記の1から4において改良厚さはどのように決めるのでしょうか?
 
A15:ご質問は、土留めにおける掘削底版の薬液注入による改良に関してですが、原地盤が砂礫土である場合にはボイリング、粘性土または細粒分の多い砂質土である場合には盤ぶくれ、軟弱粘性土の場合にはヒービングが問題となります。
 文献「薬液注入工法の調査・設計から施工まで 地盤工学会編」によると、改良厚さは、地下水位の深度や水頭により異なりますが、一般に2〜3mあればよいと記述されています。
  ボイリング、盤ぶくれ、ヒービングの概要は以下の通りです。
詳しくは、文献「根切り工事と地下水 調査・設計から施工まで 地盤工学会編」などをご覧になって下さい。
(1)ボイリング
・地盤状態
  掘削底面付近が砂礫土で、掘削側と土留め背面側との水位差が大きい。 
・破壊現象
  掘削底面に上向きの浸透流が発生し、この浸透圧が土の有効重量を超えると、沸騰したように沸き上がり、土がせん断抵抗を失います。
・設計手法 
  Terzaghi理論による方法と限界動水勾配を考える方法があります。
  (詳しくは、上記文献をご覧になって下さい。)
(2)盤ぶくれ
・地盤状態
  掘削底面付近が不透水層(粘性土,細粒土)で、その下が水頭の高い透水層。
・破壊現象
  不透水層下面に上向きの水圧が作用し、これが上方の土の重さ以上となると、掘削底面が膨れ上がり、最終的には不透水層が突き破られ、ボイリング状の破壊となります。
・設計手法
  揚圧力(上向きの力)と抵抗力(下向きの力=自重)との平衡条件から算定できます。
盤ぶくれ対策として行なう薬液注入では、改良範囲の直上に未改良部分を残して、改良部と未改良部分を合わせた全重量を抵抗力としています。  
(3)ヒービング
・地盤状態
  掘削底面付近に軟弱粘性土が厚く堆積している。
・破壊現象
  土留め背面側の土の重量や上載荷重により、すべりが生じ、掘削底面の隆起、土留めのはらみや隆起、土留め背面地盤の沈下などが生じます。
・設計手法
  Peckの安定数Nb(=γH/Su)を計算し、その値によって詳細検討を加えるか判断します。Nbが5を超えると、ヒービングの危険性が高く、地盤改良等の対策を行なう事例が多くなっています。
  砂礫土・粘性土の互層地盤の場合の検討方法についてですが、土留め矢板がどの層まで根入れしてあるかにより、ボイリングが生じやすいのか盤ぶくれが生じやすいのかという違いがあり、検討方法が異なります。
具体的には、掘削側の矢板の根入れ部分より上に不透水層が存在している場合には盤ぶくれ、矢板の根入れ部分より上に不透水層が存在していない場合にはボイリングを検討すればよいものと考えられます。